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銀と灰色の世界にささやかな黄金の青春を

PBW「シルバーレイン」及び「サイキックハーツ」用のキャラブログです。そっち自体の知識がないと読んでも意味わからないですごめんなさい。ここに住んでいるのは、稲田・琴音(b47252)、アリス・ワイズマン(b57734)、シンディ・ワイズマン(b60411)、睦月・絵里(b80917)、睦月・恵理(d00531)になります。
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09.25.13:26

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  • 09/25/13:26

05.15.09:33

「天は白く輝くときを与う」


b47252_icon_2.jpg



……私は、きっとこの力を使いこなしてみせますよ!



















イグニッションカードを生まれ変わらせる英雄霊の力。彼方より少しずつ近づいて来るのが判るそれを待ちながら、琴音は静かに佇んでいた。伝統に則ったしろがねの具足に身をよろい、鉢金をぎりりと締め、佇まいは凛と、自らの偉大なる先達への最大の敬意を表して。

彼女の胸の中にはひとつの小さな予感があった。まさかとは思いつつも、英雄霊の気配が近づくにつれて胸が高鳴って行く。そして、白燐蟲のやわらかな光が閉じた瞼の裏に弾け……目を開いた瞬間、彼女は息を呑んだ。

声が震えぬよう腹に必死の力をこめ、また体がこわばることのないよう激流渦巻く頭を全霊で制御する。無様は見せたくない、絶対にこの相手には。何故なら……。

「お祖母様……お久しゅうございます」

胸にこみ上げる熱いものを押さえつけて、琴音は頭を下げた。

「私にとって、誰より先に思い浮かぶ偉大なる英霊……それは貴女でした。そして、私と貴女の縁が、もしかしたら貴女を呼び出してくれるかもと……そう、少しだけ考えてもおりました」

言いたい事は星の数より尚多い。どうしても、声が震えて双眸に涙が滲んでしまう。激情を全て押さえ切れるほどの境地にはまだ少女は至っていなかった。

だから押さえつけるのはすっぱりと諦めて、そのための力全てを前に進む力に変える。ごつごつする喉で息を呑んで、ぐいと目元を袖で拭い、しゃんと背を伸ばす。弱みを見せることがあっても、その姿さえも誇り高くあるべきだ。そうでなければ、今の自分を育ててくれたこの人に申し訳が立たない。

その想いと、まさに育てられて身に染み付いた習性とが琴音の体を突き動かした。すう、と音もなく剣が鞘走る。

それら全ての動きを黙って見つめながら、英雄霊……琴音の祖母は動くことなく佇んでいた。しかし、琴音にはその眼差しを見るだけで彼女の心がはっきりと伝わっていた。最初は手を引いても、最後には自ら考えさせ悟らせる、それが彼女の教え方だったのだから。

……ああ、いつだってそうだった。どれだけの愛情をこめて彼女は琴音を見守ってくれていたことか。ほんの数瞬視線を交わしただけなのに、蟲を継ぐ前の常人の孫には伝えることが叶わなかった温かな彼女の想いが胸が締め付けられるほどに流れ込んできていた。

「私のあれからは、今の想いは、貴女より伝えられて私なりに磨き上げたこの技にて全て伝えます!」

だから、絶対にそれに応えなくてはいけなかった。祖母の、英霊の力を誇りと共に受け止めて、彼女が琴音に蟲を継がせたのはけして間違いではなかったと、今度こそ胸を張ってもらわなくてはならなかった。その力は琴音を戦場へと誘ったが、同時に何物にも替えがたい輝くような青春をも与えたのだ。重荷ではなく、白く輝く贈り物だったのだ。

己が言葉を語ろうと一歩踏み出したその瞬間、乱れていた想いがすうっと、琴音自身驚くほどきれいに一つにまとまった。自然に、清々しい心持ちで笑顔を浮かべられた。

「お祖母様……私、今とても幸せですよ」

英霊は、しわだらけの顔に何とも穏やかな笑みを浮かべて頷いた。その手にもまた剣が鞘走り……次の瞬間、光芒が走った。








打ち合わされると同時に二つの刃が翻り、けして離されることなきよう相手にぴったりとくっついて行き、ゆらり、ゆらりとまた次々に打ち合わされては翻った。それは相手に自分の間合いを作らせない、力を乗せさせない、合気の道にも通じる剣術だった。

伝授された全ての型を変化する流れに応じて次々使い、琴音は祖母と存分に刃を交えた。それは基本的には互いに呼吸を合わせた組太刀ではあったが、同時に、ひとつ気を抜けば有無を言わさず致命傷を与えられるであろう一切の妥協のないものだった。実際、既に何度か刃を受けきれずに琴音の体に傷が刻まれていた。

「!」

まばたきをしたほんの刹那に、冷たい予感を感じて琴音は身を引いた。その眼前を白刃が下から貫き、翻って額へと落ちかかる。腰を沈めながら両手で剣を跳ね上げると、それは毛先ほどの僅かな差で辛うじて祖母の刃を受け止めた。その瞬間に剣を斜めにずらし、上からの力を横に流す。

だが、祖母の刃はその力の流れを殺さずさらにくるりと返り、休むことなく横薙ぎに琴音を攻め立てた。それから逃げようとすれば術中にはまる。琴音は思い切り一歩踏み込み、左の手甲で打点のずれた刃の根元を巻き取るように流して右手で剣の柄を祖母の額へと打ちつけた。

だが、刃を巻き取られた瞬間に彼女は既に体を沈め、打たれるべき額を逃がしながら、踏み込んだ琴音の後ろ足を鋭く足で払っていた。主な重心は前足にかかっていたから、ひとたまりもなく体が浮いた。

「っ?!」

慌てて踏みとどまろうとはせず、琴音は残った足でそのまま跳んだ。途中で刈られた足を振り戻し、飛び抜けながら祖母の顔面に蹴りを繰り出す。さすがに密着の間合いとこのタイミングでは十分に剣を引き戻せなかったか、彼女はするりと小さく体を開いて蹴りを流した。

着地の暇を得るや、琴音は振り向かずそのまま鋭く駆け出した。距離を離してから身を返すと……がぁん!と、またも剣と剣が噛み合った。たぶん、その場で振り向いていたら受けが間に合わなかっただろう。距離を開き、体勢を整えていたからこそだった。

よく判断しました、と言わんばかりに祖母は微笑み、そして剣から離していた左手を跳ね上げた。琴音の胸を、光の塊が激しく打ち据える。

「が、はっ……!」

彼女たちの戦装束の鈴。それは、剣戟の動きと共に呪楽を奏でるためのものであり、鈴を揺らす歩法のひとつひとつに秘奥があった。

幾つもの鈴の合奏によって既に高められていた祖母の蟲の力は、琴音の隙をついて鎧の内部へと食い込んだ。だが、琴音も辛うじて高めておいた蟲の力をガードに回すのが間に合い、大きく跳ね飛ばされながらもまだ立ち上がる余力を見出すことが出来ていた。

しかし、距離が開くと途端に祖母は次々と白燐の光を身の回りに浮かべてそれらを弾丸のように撃ち出し始めた。拡散弾とはまた違う、琴音が見たことのない技だ。必死に剣を掲げてガードするも、その防御の上からさえ彼女の白燐蟲の光は次々と祖母のそれに食い荒らされて行く。

蟲達の勢いは見たこともない程激しく、ガード出来ずに肉に食い込めばそこから体内までも食い荒らして来た。命の力がどんどん奪われ、手足の先が冷たく、鉛のように重くなって行く。当然ガードも鈍くなり、食い込む一撃がどんどん増えて行く。

やがて太股を齧られて身体が傾いだ瞬間、ひときわ強烈な一撃が琴音を襲った。腹部にどん、と熱い衝撃が走り、目の前がすうっと暗くなり始める。苦痛を超えた先にある暗黒と浮遊感が彼女の細い体を包み込んだ。






……そして、その感覚が……吸血鬼との戦いで祖母の白燐蟲が琴音の命の最後のひと筋を繋いで散った時と同じそれが、少女の魂のもうひとつ奥に隠れていた光を呼び覚ました。






かっと目を見開き、傾いだ体をぐいと立て直して、琴音は容赦なく未だ撃ち放たれ続ける燐光の弾丸を真っ向から受け止めた。そして、真直ぐにそれを見つめ続けた。

「……わかり、ました……!」

身を削られながら見覚え、それでも足りなかった最後の一要素がぴたりとはまった。突き出された琴音の手から、飛来する無数の光弾を突き抜けて純白の光が撃ち放たれる。それは、狙いあやまたず祖母の胸板へと食い込んだ。

苦悶を呑み込んで大きく息を吐き、一拍おいて彼女は剣を降ろす。少しずつその口元がゆるみ、見ている者が誇らしくなるほどに誇らしげに笑った。

「あなたの覚悟、確かに見ましたよ……琴音。これで私も、自分の残したものを悔いることなく誇っていける」

例えようもないほど安らかにそう告げると、祖母の身体が銀色に輝いて薄れはじめた。

「お祖母様!」

試練の終了、つまりは祖母との別れを直感し、琴音は何もかもをかなぐり捨てて消え行く気高い姿に駆け寄った。

「わ、私……私、お話ししたい事がもっとたくさん……!」

「贅沢を言うものじゃありませんよ……本当はあそこで終わっていたのですから。でも、あなたの立派になった姿を見て、後悔を拭い去る機会が与えられて……私は本当に果報者です」

昔と同じ、しわだらけで固くて、でもとても優しい手が琴音の頭をそっと撫でる。少女の目から、涙がとうとう堰をきって溢れ出した。

「わ、私、まだまだ全然力不足で、お祖母様のお心に見合うほど立派じゃありません!だから、もっともっと頑張ります!ずっと、側で見ていて下さい……!」

「ええ……私はずっとあなたと一緒ですよ、琴音。この世とあの世に離れていても、あなたが私を忘れない限り私はけして消えることはないのですから」

「き、きっと、きっと、未練にならぬよう、しっかりお天道様に向けて……ぐすっ、真直ぐに立ってお祖母様の御覧に応えますからっ!」

泣きじゃくりながら叫ぶ愛しい孫を、ほんの少しだけ困ったように笑って英霊は見やる。やっぱり、まだまだ子供なのだ。

「わ、私、土蜘蛛の主様に、巫女にして頂いたんです!その主様、お祖母様のお話を聞いて、一度会ってみたかったとおっしゃってました!私を育てた人ならさぞ面白かっただろう、って!」

面白いと思われた自分を育ててくれた祖母への誇りと感謝を込めて、最後に孫は叫んだ。

祖母はきょとんと目を丸くして、それからからからと豪快に笑った。滅多にしなかったけれど、琴音はその笑いが大好きだった。暗さの欠片もなくて、ちょっと悪戯っぽくもある笑い声。それを存分に上げながら、祖母は晴れやかに消えて行った。彼女からこぼれる光が、その笑いが、涙と共に琴音の全てを清めて行くようだった。泣き続けながら、琴音は笑った。いつの間にか手の中に現れていた新たな力の札を、しっかりと胸に抱きしめながら。

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