01.22.17:13 [PR] |
10.04.09:27 非常に時期を外してしまいましたけど |
ようやく完成しましたので、お盆の最後の一作をお届けしますね。
まあ、と言うよりはきちんと揃えるものは揃えておかないと私が気分が悪いと言う感じなのですが……よろしければお読みくださいな。
なお、このSS内の「他にも同じようなことをしている者はいたかも知れない」の一人になりたいと言う奇特な方はご一報下さい。ご覚悟さえおありでしたら、いずれご出演をお願いするかも知れません。確実に遅筆ですが。
さっ、さっ……ぱちん、ぱちん。箒が道を清め、剪定鋏が道の邪魔になる枝を詫びの言葉と共に刈り込んで行く。
「白児さん、せっかくのお休みにごめんなさいね。私が個人的に始めたことですのに……」
「休みだからこそ、ですよ。……それに、私も思うところが無いわけでもありませんし、ね」
二人は今、葛城山の頂上の目立ったゴミを集め、そこから伸びる道の表を箒で均し、通る妨げとなっている蔓や枝を払っていた。それは、これからお盆で現世に帰って来る常世の方々をお迎えするための下準備だった。
日が傾くころになると、周辺はそれなりに広い範囲ですっかり綺麗に整っていた。さすがにちょっとやそっとの人数で(他にも同じようなことをしている者はいたかも知れないとは言え、だ)山ひとつを一日でどうこう出来るものでも無かったが、玄関だけでもせめて体裁をつけられ、琴音は満足そうだった。
そして、彼女は実家より持参した稀少な伽羅の香木を小さな祭壇に捧げると、準備しておいた清めの火種をそこに移した。芳しい香りと火が夕焼けにも負けぬほど赤々と立ち上り、お盆の迎えとして輝き出した。
「……今日の夕焼けの色は、まるで土蜘蛛様達の炎のよう」
地から天へ道のごとく伸びていく白い煙をじっと見つめながら、彼女はぽつりと呟いた。
「そして、きっとあの戦いで散った私達の学友の魂もこんなにあかきものだったのでしょうね」
合わせていた手を解き、白児は小さく頷く。引き締められた口元は、何を思っているのか。
「誇りある者達よ。どうかその炎のかけらを常しえに私達の中に……」
夕焼けと迎え火を映した、あかくあかく輝く二対の瞳。それもまた迎え火となり、死者達を生者の中に呼び込んで行く。生ける防人達の中に、死せる勇士達は満足の行く何かを見出せるのか……それは、死せるものにしか判らない。生きているものに出来るのは常に、何者にも恥じず生きられるよう、終わりの見えぬ道を歩み続けることだけなのだ。
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